AZグリースの自転車への使用についての考察(リチウムグリース、シャーシーグリース、二硫化モリブデングリース、ウレアグリース)

グリスの話なんですがね。

自転車のグリスって高くて、シマノのデュラグリスが50gで800円ぐらいとかする。ところが、ホームセンターなんかでAZ(エーゼット)のグリスをみるとリチウムグリースが400gで200円とかで売ってるわけで、とても安いわけです。

AZリチウムグリース

↑ 400gの蛇腹。種類によってキャップの色が違う

AZリチウムグリース中身

↑ リチウムグリースの中身

AZグリースの種類

AZのグリスにもいろいろと種類があって、カタログやらを見てみるとだいたい以下のような感じだ。(他にもあるかも)

  • リチウムグリース
  • 極圧リチウムグリース
  • シャーシーグリース
  • 極圧シャーシーグリース
  • ウレアグリース
  • 二硫化モリブデングリース
  • 極圧二硫化モリブデングリース
  • 極圧グラファイトグリースウレアベース
  • 極圧有機モリブデングリース
  • 極圧有機モリブデングリースウレアベース

基本的には、リチウムグリースというのが万能グリスとかMPグリス(マルチパーパスグリス)と呼ばれているものでだいたいどんな場所にも使えるというやつ。

極圧とついてるのはおそらく何らかの添加剤を加え、荷重により耐えるような性質をもたせているのだと思う。荷重に耐えるっていっても想定してるのは重機とか車とかの話だと思うので自転車に大してはあまり考える必要はないんじゃないかなと思う。

AZグリースの価格

次に価格だが、うちの近くのホームセンターで発見できた範囲だと以下のような価格で売られている。

  • シャーシーグリース(100円ぐらい)
  • リチウムグリース(200円ぐらい)
  • 二硫化モリブデングリース(300円ぐらい)
  • ウレアグリース(600円ぐらい)

ちなみにすべて400gの蛇腹チューブだ。80gの蛇腹のタイプとかいろいろあるけど、400gの蛇腹で買うのが抜群に安い。それも、グラム単価とかそういうちゃちな話じゃなくて、例えばうちの近所のホームセンターではリチウムグリースの80gの蛇腹と400gの蛇腹が全く同じ198円で売っている。

簡単に手に入りそうなのは上の4種類ぐらいだと思うので、この4種類についてちょっと考えてみたい。

シャーシーグリースとリチウムグリース

シャーシーグリースはリチウムグリースの約半額と安価であるためかなり気になる存在だ。グリスは増ちょう剤(液体の油(oil)と増ちょう剤でグリスになる)により区分することができ、リチウムグリースはリチウム石けんを増ちょう剤とし、シャーシーグリースはカルシウム石けんを増ちょう剤とするグリスである。ちなみにシマノのデュラグリスはカルシウム石けんを増ちょう剤とするグリスなので、分類的にはシャーシーグリースの仲間だ。一番安いやつ。

リチウム石けんグリースは耐熱性、耐水性ともに優れる。カルシウム石けんグリースは耐水性は良いが耐熱性が弱いが安価。自転車に関していえば耐水性に優れていることが重要だと思われるのでどちらも十分利用できるグリースだと思われる。(肝心のどっちがどれくらい優れてるとかのデータが見つからない)

また、参考サイト(グリースについて)の増ちょう剤の種類による潤滑性という表を見ると、リチウム石けんの摩擦係数が0.008であるのに対してカルシウム石けんの摩擦係数は0.012であるため、リチウムグリースの方が摩擦係数は小さい。

それ以外の違いに「ちょう度」が挙げられる。リチウムグリースのちょう度が2号(No.2)なのに対し、シャーシーグリースのちょう度は1号(No.1)である。ちょう度というのはグリースの(動)粘度にあたるもので、つまりは硬いとか緩いとかの度合いだ。数字が大きいほど硬いのでシャーシーグリースはリチウムグリースに比べて緩いグリースだと言える。

自転車での使用に関しては、なんとなくだけど、ちょう度の違いが一番影響が出そうな気がする。実際のところどうなんだろうか、今後いろいろと試してみたい。

ウレアグリースとリチウムグリース

ウレアグリースとリチウムグリースはどちらも万能グリス(MPグリス)と呼ばれる汎用性の高いグリースである。ウレア系はリチウム系に比べ耐熱性に優れるが高い。

リチウムグリースも耐熱性には優れているらしいので、より耐熱性が必要な場面でウレアグリースを使うと言うことなのだと思う。つまり、自転車についてはリチウムグリースで必要十分と考えることができるのではないだろうか。

リチウムグリースと二硫化モリブデングリース

リチウムグリースから100円アップぐらいで二硫化モリブデングリースが手に入る。二硫化モリブデングリースというのは、ベースはリチウムグリースであるが、そのリチウムグリースに二硫化モリブデンを添加したものと考えれば良い。100円やそこらでより良いグリースが手に入るのであればこっちを使いたい気もするがどうなのだろう。

そもそもなぜ二硫化モリブデンを添加するのだろうかというと、耐荷重性を向上させるために添加するのだそうだ。二硫化モリブデンには卓越した耐荷重性能があるのは広く知られていることなのらしい。

逆に二硫化モリブデンを添加することによる問題点も発生する。それは次の3点である。

  • 個体である
  • 天然鉱石である
  • 酸化する

二硫化モリブデンの最大の欠点はそもそも固体粉末であるということで、固体であるがゆえに摩擦部分への吸着性・保持性は液体に劣る。天然鉱石であるため、不純物が含まれると言うことは避けられない。潤滑性能自体はそれほど失うわけではないが、酸化して三酸化モリブデンと硫黄酸化物に変化する。

つまり、二硫化モリブデンを添加するということは二硫化モリブデンの粉末を混ぜることなので耐荷重性は向上してもその他の性能が落ちてしまうと。また、完全に純粋な二硫化モリブデンを添加できるわけではないのでよくわからない不純物も混じってしまうというのが欠点であるというわけだ。

二硫化モリブデングリースは自転車に使うグリスとしてはどうなのか

これまでのまとめから、二硫化モリブデングリースというのはグリースとしてのその他の性能を多少犠牲にして耐荷重性を大幅に向上させたグリースと考えることができそうだ。つまり、ある程度使いどころを限定したグリースだと考えられるわけです。

自転車に関して言えば、耐荷重性などはリチウムグリースで十分だと思われるため、二硫化モリブデングリースの出番はないと考えられる。むしろ、耐荷重性が必要でない場面ではリチウムグリースの方が良い性能を発揮すると考えられる。

なんとなく値段が高いと、安いグリスに対してすべてにおいて優っているような気がするが、実際には特定の用途に特化しただけであって、高いから高性能とかそういう安易な考えは禁物だと言うことが言えるとおもう。

結言

やはり基本はリチウムグリースで、シャーシーグリースも使えるかもしれないといったところだろうか。そして、二硫化モリブデングリースは必要な場面はあまりなく、ウレアグリースはちょっと高いので避けたいと。

参考サイト

追記

Googleなんとかツールを眺めていたら,この記事に対して言及してくれている方がいらっしゃったので,それに関して追記しておく.

【潤滑】ケミカル総合スレ39本目【洗浄】

自転車にウレアはオーバースペックではない。 耐熱性だけで見れば無意味だが、耐水性の点でリチウムよりもウレアのほうが強い。 (ただし、ウレアといっても成分には色々あり、耐水性の高いものもあれば並のものもあるらしい。)

ということで,より耐水性が求められる場面(雨のなか走るなど),箇所(浸水しやすい箇所)に対してはウレアグリースは決してオーバースペックではないとの主張だと理解できます.したがって,雨の日は自転車なんか乗らないよと思えばリチウムで十分だという判断もできるし,そうでなければウレアグリースを使用するという判断になる.ただし,自転車のように大量のグリスを必要としない場合はリチウムとウレアの価格差もほとんど気にならないレベルと思われるため,念のためウレアグリースにしておくという判断もありかなと思う.

自転車に極圧性は不要ではない。 事実、適切にグリスアップしていても表面が削れる。 砂などが侵入したときには面積あたりの荷重が跳ね上がるので、保険として極圧性はあったほうがいい。

本記事においては,極圧というのは重機やなんかを想定しているので自転車の場合はそこまで考える必要はないのではとの根拠のない想定のもと話を進めていたわけだが,それに対していやいや自転車でも極圧性は必要であるという主張.確かに自転車は細かい砂などが侵入しやすい構造であるため,保険のために極圧性はあったほうがいいという主張は納得できる.一方で,このような書き方をしてしまうと,リチウムグリースはちょっとでも大きな荷重が加わると全然だめみたいな印象を与えてしまうような気もするので,モリブデングリースはあくまで相対的に極圧性が向上するのだという点はグリースの選択においては考慮する必要はあるかなと.また,この記事で一番アピールしたかったのは,値段=性能という単純な話ではないという点で,モリブデングリースはリチウムグリースより値段が高いのでグリースのあらゆる性能においてリチウムグリースより優れているわけではないという点である.なので,リチウムかモリブデンかという選択では,潤滑性は多少犠牲にしてでも(あるいはそんなに変わらないので)極圧性を重視したいと考えればモリブデングリースという選択になるし,極圧性を多少犠牲にしてでも(あるいはリチウムの性能で十分なので)潤滑性および価格を重視したいと考えればリチウムグリースという選択になるということで,グリースの選択基準をはっきりさせればどちらのグリースの選択においても相応の妥当性はある.

元の記事は,ウレアグリースやモリブデングリースはリチウムグリースより値段が高いだけで,自転車にとっては良いことなんにもないみたいな印象を与えてしまったかなと思っていますが,実際にはそうでない場合も多々あると思われますので,それぞれのグリースの特徴を自分なりに調べて理解して選択することが大切なのかなと思います.

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